Ⅱ.放談 「横井君と藤原君、そして赤峰君のあげな話、こげな話」 第133回
産経記者起訴、韓国は新たな「対日賠償カード」にした??

赤峰 産経新聞前ソウル支局長の加藤達也氏を名誉毀損で在宅起訴(出国禁止処分を10月15日から3カ月間延長)した問題は、内外にさまざまな波紋を投げかけました。まず、藤原さんから、国際社会がこの問題をどう見ているのかの分析をしていただきましょう。
藤原 国際社会は韓国を「言論の自由すら保障されない軍事政権同様の後進国である」との認識を示しました。したがって、韓国が、国際社会で何を発言しようが、信頼性を著しく欠くという印象を与えたことは否定できません。かつて、アウンサンスーチーさんを長年にわたり軟禁したミャンマーと同程度に認識されているようです。
Yahooニュース【※1】にも「産経前支局長起訴問題、日本が国連への問題提起検討・・韓国ネットは『“7時間”に世界の関心が…』『起訴を取り下げて』」との見出しで報道され始めています。
【※1】XINHUA.JP 10月17日(金)0時27分配信:韓国日報は16日、産経新聞の加藤達也前ソウル支局長が在宅起訴され出国禁止措置が続いている問題で、日本の岸田外相が同日の参院外交防衛委員会で、国連人権理事会への問題提起を検討する考えを示したことを伝えた。【以下略】
国連人権理事会【※2】は、「人権と基本的自由の保護・促進及びそのための加盟国への勧告」などを行う機関で、国際社会に重要な影響力を持ちます。
【※2】国連人権理事会:理事会は47ヶ国で構成される。総会の3分の2の多数により、重大な人権侵害を行った国の理事国資格を停止することができる。なお、反日勢力がよく持ち出す「国連自由権規約委員会」は条約機関である。同委員会の勧告は法的拘束力を持たない。
赤峰 韓国内ではこの産経問題はどう見ているのでしょうか? 横井さん、解説をお願いします。
横井 韓国政府は「ふり上げたこぶし」の落としどころが分らなくなっているようです。『悪韓論』の著者、室谷克実氏は「検察当局は、前支局長が『遺憾の意』ぐらいは述べると踏んでいたようだ。そうしたら、『誤報の責任を認めた』ことにして、国外退去処分で一件落着と。ところが、前支局長は“罪科”を認めない。それで困ってしまい起訴まで・・・」と述べている通りだと思います。引っ込みがつかなくなったという点が最大のポイントでしょう。
しかし、これがパククネ政権の命取りになろうとしています。なぜならば、パククネ大統領の「空白の7時間問題」というのは国内問題です。それを産経新聞が報じたからといって目くじらを立てて、新聞記者を訴えてしまったということは「言論の自由」の問題に変質させてしまったことになるからです。国内問題が、国際社会から「韓国の人権問題」として捉えられてしまったという致命的なミスにまでなってしまったということです。
藤原 これまで韓国は慰安婦問題について日本を「人権侵害」として激しく非難していたわけですが、人権侵害を犯しているのは韓国政府となると、国際社会での信頼が無くなりますね。
横井 韓国国内にあっては、産経新聞問題は国内を二分する問題になったと思います。
大統領陣営は日本攻撃の最大のチャンスとして、市民団体を使って「反日」パフォーマンス【※3】を行っています。これなど、ヘイトスピーチそのものなのですが、人権意識の希薄な韓国の人たちには愛国行為となっているのでしょう。
一方、反パククネ陣営にとっては政権打倒の攻撃材料【※4】となっています。産経問題はもはや蚊帳の外で、パククネ氏の行状に対する非難を通しての反体制運動になろうとしています。
結局、産経新聞記事は、韓国という国家を大きく揺るがせてしまう要因になったのではないかと考えられます。
【※3】:安倍首相と産経前ソウル支局長が朴大統領に謝罪!? 保守系団体、ソウル都心で謝罪パフォーマンス 朝鮮日報日本語版 2014/10/15
「おい、何あぐらをかいているんだよ! 土下座しろ!」。ひざまずいて深々と拝礼し許しを請う2人。日本の安倍晋三首相と加藤達也・産経新聞前ソウル支局長の面をかぶった2人が、朴槿恵(パク・クンヘ)大統領と韓国国民に謝罪するパフォーマンスが、今月13日午後3時30分ごろ、ソウル市中区の京郷新聞社前で行われた。
【※4】:『ハンギョレ』と「参与連帯」、朴大統領「空白の7時間」の情報公開を要求 ハンギョレ新聞 10月15日
朴大統領「ライフジャケット着てるのにどうして?」、セウォル号事故が起こって7時間がすぎてした質問、事故当日の14回にわたる大統領への書面報告内容に疑問、非公開ならば行政訴訟の方針
赤峰 産経新聞問題は当初の韓国政府との思惑とは異なり、国際社会での重大な人権問題になってきました。また、韓国内においては、左右対立の溝が深まりました。
詳しく検討していきたいと思いますので藤原さん、お願いします。
藤原 この問題は、韓国への嫌悪感をより大きくさせただけではないようです。韓国への観光客は少なくなるでしょうし、進出企業も韓国撤退を真剣に考え始める事態になってきた気配があります。韓国の法律が時の権力者によって恣意的に運用されている実態、そして反日を軸とした法運用が、進出企業に悪影響を与える可能性を十分に理解したはずです。
その上、韓国は牽引車であるサムスン、ヒュンダイが減益傾向にあり、その原因を円安・ウォン高に求め、元凶は日本であると考えているので、日本企業は極めて居心地が悪いのが現状だと思います。
赤峰 10月1日のウォール・ストリート・ジャーナルは、「サムスン電子の下げ、韓国株式市場を道連れに」として、韓国の株式市場全体の14.4%を占めるサムスンの不調が株価全体を下落させていると報じています。また10月13日の中央日報では、「現代重工業、役員260人が一括で辞表提出」という記事もあり、事態はかなり深刻のようです。
藤原 韓国経済は1997年の『朝鮮戦争以来、最大の国難』の時に近い状況にあると思われます。このような状況下で日本企業の韓国進出は、リスクが大きすぎるのでないでしょうか。
赤峰 日本という存在があって成り立つ韓国にとっては重大問題になるでしょうね。
横井 これらを考えますとある仮説が出来上がります。韓国政府は当初の思惑とは別に、産経新聞問題を、慰安婦問題に代わる「外交カード」にしたのではないかと。
慰安婦問題は朝日新聞の記事撤回によって根拠が弱くなってしまった。韓国政府は今回の産経新聞問題を利用して日本叩きに使おうとしたのではないかと思えるのです。つまり、産経新聞問題は、日本に対する取引材料にしようと考えたのではないかと思えるのですが・・・。
藤原 なるほど、慰安婦問題も「対日賠償請求のための捏造」ということが明らかになってきましたからね。日本政府も慰安婦問題では全く動揺しなくなった。むしろ、韓国の虚偽【※5】が世界に明らかにされそうな気配になっています。
ですから、今度は、産経新聞を標的にして、新しい対日交渉カードとしたということでしょうか。そう考えれば、パククネ大統領とその陣営にとっては、たとえパククネ大統領の「空白の7時間」という恥をさらしてでも、反日という姿勢は保てますからね。しかも、政府間交渉に持ち込めば、日本に頭を下げさせることができると計算しているのかもしれません。
【※5】:ハンギョレ新聞 10月17日 日本政府が「慰安婦は性奴隷だった」という国際社会の常識を覆すため本格的な世論戦に突入した。 慰安婦問題に関連する国連人権委員会など国際人権機構が最初に出した報告書である1996年の「クマラスワミ報告書」を最優先の攻撃対象に定め、報告書の一部内容に対する撤回を要求したことが確認された。
横井 そして、その交渉過程を通して日本側に譲歩を求める。それは、産経新聞の謝罪だけではなく、慰安婦問題を含めての日本政府としての謝罪であり、賠償請求事案であると考えていると思います。
赤峰 それでは、最後に識者からのご意見をいただきます。
・韓国に対する国際的評価の低さは、今に始まったことではありません。
・その国民性が世界のひんしゅくを買っていることは周知の通りです。
・日本は長らく韓国に対し、寛容な姿勢で臨み、韓国経済を大きく支えてきました。
・日本国家も日本国民も、そのことに関しては、恩着せがましいことも言わず、不満を言う者もいませんでした。
・しかし、近年、韓国政府による反日姿勢が顕著になり、理不尽な要求さえもするようになってきました。
・それは朝日新聞社の間違った報道に端を発したものです。
・それでも、粘り強く首脳会談を呼びかける日本政府の姿勢には頭が下がる思いです。
・国家としての高い品性、寛容さは、その国や国民の精神的成熟度を表しています。
・韓国の理不尽さに対しては毅然とした態度で臨むと同時に、精神的な面で善導することも忘れてはならないと思います。
・それが世界のリーダー国を標榜する日本の取るべき態度であると信じています。
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