?.放談 「横井君と藤原君、そして赤峰君のあげな話、こげな話」 第100回
朝日新聞が北朝鮮を捨てた日

(「変節の朝日新聞」のつづき)
赤峰 それでは、朝日新聞報道における犯罪行為をさらに検証していきたいと思います。ここで、どうしても取り上げなければならないのが、「在日韓国人の北朝鮮帰還事業」を朝日新聞が積極的に取り組んでいた問題です。この問題には「日本人妻」の問題もありますし、この事業を行うことによって北朝鮮側の「拉致」を結果的に推進するようになったのではないかと思われるからです。
横井 そうだと思います。それで、議論を始めるにあたって、現在の朝日新聞の北朝鮮観とかつての報道との対比をまず行いたいのですが・・・。
朝日新聞の立場も以前とは、まったく違うと思いますので、そこから検証してみましょう。まず、それが分る資料はありますか?
赤峰 それでは、かなり大まかになりますが、年代を追って朝日新聞の北朝鮮報道を追ってみたいと思います。
1960年2月26日 「希望者ふえる一方」:(北朝鮮への)「帰還希望者がふえたのはなんといっても『完全就職、生活保障』と伝えられた北朝鮮の魅力らしい。各地の在日朝鮮人の多くは帰還実施まで、将来に希望の少ない日本の生活に愛想をつかしながらも、二度と戻れぬ日本を去って"未知の故国"へ渡るフンギリをつけかねていたらしい。ところが、第一船で帰った人たちに対する歓迎ぶりや、完備した受け入れ態勢、目覚ましい復興ぶり、などが報道され、さらに『明るい毎日の生活』を伝える帰還者たちの手紙が届いたため、帰還へ踏みきったようだ」
1994年6月15日社説 「核開発の疑惑を持たれている朝鮮民主主義人民共和国」:(北朝鮮)が、国際原子力機関(IAEA)からの即時脱退を宣言し、あらゆる査察を受けないとの声明を発表した。これで核疑惑はいっそう深まり、朝鮮半島の緊張は高まら ざるをえない。まことに憂慮すべき事態の悪化である。
1997年2月3日、産経の朝刊が横田めぐみさんの実名をあげ、写真入りで拉致疑惑をスクープした。これを新聞各紙が夕刊で、テレビが夜のニュースで後追いし、拉致報道に火がついたのだが、その時も朝日新聞はベタ記事すら載せなかった。
1998年6月7日社説 「援助をしつつ、拉致疑惑解明を」: しかし、朝鮮半島の緊張をやわらげるには、構造的な食糧、経済危機をかかえる北朝鮮に必要な援助を続けつつ、軍事的な暴発を防ぎ、開放を促していくしか道はない。それがもうひとつの現実である。
1998年9月5日社説 「国際協調による関与こそ」:(北朝鮮のテポドン発射)同時に考えなければならないのは、1994年の米朝合
意に基づく軽水炉の提供事業は、北朝鮮の核開発を押しと どめるためのものだ、という事実である。日本が10億ド ルを分担することが決まっている。その枠組みを壊すことは許されない。
2002年9月18日 「痛ましい歴史、直視して 日朝首脳会談」政治部長 木村伊量:いかなる意味でも拉致は正当化できないが、そもそも日朝の不正常な関係は、北朝鮮ができる前、戦前、戦中の35年間にわたる日本による朝鮮半島の植民地支配に始まる。《中略》どの国も「負の歴史」をおっている。過去の日本がそうなら、北朝鮮もそうである。つらいことだが、歴史を乗り越えるには、それを直視するしかない。(政治部長)
2012年3月17日社説 「北朝鮮ミサイル―打ち上げ中止を求める」 :そんな勝手し放題を許すことはできない。北朝鮮は先の米朝合意の意味するところを誠実に守り実行する。核をはじめミサイル、拉致問題の包括的な解決を図る。そうすることで米国、日本との国交を正常化する。それが北朝鮮の生きる道だ。
2014年7月29日社説 「ミサイル発射 日朝協議でも説得を」: 短距離であってもミサイル発射は国際社会への挑戦であり、自国の孤立を深みに追い込む。発射の政治的なねらいは、まず韓国の朴槿恵(パククネ)政権を意識したものとみられる。最近のミサイルの発射にも、日米韓をにらんだ思惑がにじんでいるとみるべきだろう。日本政府は発射に抗議しつつも、日朝協議は続ける意向だ。そうした影響評価は韓国とは当然ずれる。ただでさえ歴史認識などで関係が悪い日韓が、北朝鮮政策でも足並みを乱せば、それこそ北朝鮮の思うつぼだろう。・・・
藤原 2002年の木村政治部長《現社長》の記事と2012年の社説には大きな断層がありますね。2002年までは北朝鮮の立場にたっていました。それが、いつの時点で変わったのかははっきりわかりませんが、北朝鮮を否定し、完全に韓国の立場で発言しているのは実に不思議です。
横井 2014年の社説は、完全に韓国の主張と一緒ですね。
韓国の大統領との関係も含めて、ちょっと年表にしてもらえませんか?
赤峰 韓国大統領の就任期間と朝日新聞の慰安婦問題、日本と北朝鮮との関連もあわせて記載します。
1988年〜1993年 盧泰愚(ノ・テウ) 軍人による最後の政権
1991年 朝日新聞記者・植村隆が08月11日の紙面にて、「従軍慰安婦」について記事を掲載
1992年 1月16日 韓国を訪問した宮沢首相は慰安婦問題の報道により、首脳会談で8回謝罪し、「真相究明」を約束する
1993年〜1998年 金泳三(キム・ヨンサム) 新韓国党
1993年8月4日 河野洋平内閣官房長官が旧日本軍の強制連行を認める「河野談話」を発表
1998年〜2003年 金大中(キム・デジュン) 新政治国民会議 (親北朝鮮)
1998年8月31日に北朝鮮がテポドン1号を日本海に向けて発射
2002年9月17日 日朝首脳会談
2003年〜2008年 盧武鉉(ノ・ムヒョン) 新千年民主党(親北朝鮮)
2005年3月 朝日新聞若宮啓文論説主幹 「竹島 いっそのこと島を譲ってしまったら、と夢想する。」
2005年6月24日 秋山耿太郎氏 朝日新聞社代表取締役社長就任
2008年〜2013年 李明博(イ・ミョンバク) ハンナラ党
2009年9月16日 日本、鳩山由紀夫内閣が発足。
2012年8月10日 韓国の歴代大統領として初めて竹島に上陸した。8月14日 - 韓国教員大学校での講演で天皇の謝罪を要求
2012年12月16日 日本。民主党政権崩壊
2013年〜 朴槿恵(パク・クネ) セヌリ党
横井 慰安婦問題の捏造は、軍人政権の最後の時代である盧泰愚氏の時代にはじまったのですね。
赤峰 これについては、宮崎哲弥氏がこのように発言しています。「慰安婦問題は朝日新聞の捏造だと盧泰愚元大統領が証言」。この中で、盧泰愚氏の「朝日新聞が慰安婦問題を韓国でこの問題を炊きつけ、韓国民を憤激させてしまいました」との発言が引用されています。
これを見ますと、盧泰愚政権とは無関係に話を朝日新聞が進めたのだと思います。
藤原 ここで注目しなければならないのは、やはり鍵は、秋山耿太郎氏が社長に就任した2005年前後のことですね。秋山氏の社長就任で「親北朝鮮」から「親韓国」へと明確に路線転換をした可能性が高いですね。
2005年ころの、韓国は左派政権の盧武鉉氏が大統領ですから、朝日新聞の「反日」と共通項があります。
とくに韓国は、金大中氏―盧武鉉氏と親北朝鮮派の大統領が続き、従来の韓国の政策であった「反北朝鮮」の代替としての「反日」が露骨なまでに協調されるようになっていました。その意味では、朝日新聞と「共通の敵」になったのでしょう。
赤峰 秋山氏が社長に就任する直前ですが、2005年3月25日付朝日新聞社説はこう述べています。
盧氏は大統領府のホームページに載せた談話で「侵略と支配の歴史を正当化し、再び覇権主義を貫徹しようとする意図を見過ごすわけにはいかない」と、日本政府を激しく批判した。韓国民から見れば、戦前回帰と疑いたくなるのも無理はない。盧大統領の談話はいきなり飛び出したのではなかろう。積もり積もった不信感が過激な言葉になったとみるべきだ。
これに対して、読売新聞の社説は対照的です。一部引用します。
[盧武鉉談話]「日韓対話への悪影響を懸念する」:ちょっと乱暴過ぎるのではないか。一国の元首の発言としては驚くような内容だ。
盧大統領の強硬姿勢で、日韓の政府間対話が成り立たなくなる恐れがある。6か国協議へも悪影響が及び、核武装を進める北朝鮮を喜ばせることになる。 盧大統領には再考を促したい。
横井 なるほど、もうこの時期は、朝日新聞と韓国はほぼ一体となったと考えるべきでしょう。若宮氏の「竹島発言」も同時期ですから。
ただし、それは「反日」という共通点だけで、北朝鮮に対する考え方は異なっていた可能性もありますね。こう考えますと、あらためて秋山氏の「親韓」路線が今日の日韓関係に悪影響を及ぼしたというのがよくわかります。「放談(95)朝日新聞の社風は『捏造』」参照。
藤原 ここまでで、朝日新聞のご都合主義ぶりがよくわかりましたので、改めて、朝日新聞による「在日韓国人の北朝鮮帰還事業」問題を考えていきましょう。
赤峰 ここで、朝日新聞の内情に詳しい情報筋からのお話がきましたのでご紹介します。
・韓国の盧泰愚(ノ・テウ)大統領時代に、朝日の秋山氏(現会長)や木村氏(現社長)が韓国と親密な関係になりました。
・親密になった理由は「反日」という共通の意識があったからです。
・朝日の反日意識は「反政府」からエスカレートしたものです。
・「反政府=反日」 となるケースは意外に多く、共産党、社民党、民主党などに見られます。
・反日感情の中身には若干の違いがあるものの、韓国側と朝日新聞社では双方で、「反日感情」を利用し合う関係が成り立ったわけです。
・そのため朝日は、わざわざ韓国政府に対し「韓国への謝罪の材料」である慰安婦問題を提供したのです。
・朝日と韓国のこの関係は現在も継続しています。
つづく

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