Ⅰ. 赤峰和の時事解説 第130回
解散考(2) 経済政策は「経世済民」の原点に立ち返るべき

(「経済政策の批判ばかりで選挙は勝てるのか?」のつづき)
民主党の代表は以前経済評論家だった海江田氏なので、民主党政権下の経済政策についての総括があってもしかるべきと思いましたが、そのような話は聞いたことがありません。民主党は、当時の出口の見えないデフレ不況になんら有効な手を打つことはできませんでした。それどころか、財務官僚の言うがままに、円高誘導と消費税増税を決定しました。
民主党政権下、最後の首相であった野田佳彦氏が衆議院を解散した2012年11月の株価は9.024円、1ドル=81円台でした。
同年12月16日の衆議院議員選挙で自民党が圧勝すると、翌日の株価は9,828円まではねあがり、円も1ドル=84円台までになりました。そして、安倍内閣の発足の翌日には10,322円、1ドル=85円台まで回復しています。
これは、安倍晋三自民党総裁の「政権を取ったら大胆に金融緩和する」といった発言に期待感が集まったからです。
その後、総理大臣に就任した安倍氏はアベノミクス【※1】という経済再生政策をうちだしました。
【※1】アベノミクス:デフレ経済を克服するためにインフレターゲットを設定し、大胆な金融緩和措置を講ずるという金融政策。その三本の矢として、大胆な金融政策、機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略を掲げた。
これらの政策により2014年11月19日現在、株価は17,288円、1ドル=117円台となっています。安倍政権発足時よりも株価は7000円以上も上昇し、円も20円以上も円安になっています。
このマーケット動向については、「株を持っていないから自分には無関係」と言う人が多いのですが、実は、このような動きは国民生活に大きな影響を与えているということを知らねばなりません。
株価については株安の局面から見た方が意味が分るかもしれませんからこれで説明しましょう。
株安になれば、次のようなマイナスの循環になります。
企業の資産が減る→銀行からお金が借りにくくなる→資金繰りが悪化→給料が減る、または人員削減。このような暗い状況になるのです。その逆の、株価が高くなりますと、景気がよくなり、企業も個人も所得が増えてくるという状態になるわけです。景気がよくなれば社会保障の負担も軽減されます。デフレという最悪の状態からも脱出できることになります。
また、円安になると「海外から見て日本の商品が安くなるため、輸出企業に有利な状態となる」と言われています。しかし、円の価値が低くなるため、「海外旅行やブランド商品などの値段が上がってしまう、原油の仕入れコストが高くなる」というデメリットもあります。この問題は、実はバランス上の問題でもあるわけですが、経済学者の浜田宏一氏によれば「円安局面の方がメリットが大きい、円高は産業の空洞化をもたらす」、「金持ちに有利」と述べておられます。
ただし、こういう意見は、マスコミで論じられることはあまりありません。おそらくは、日本の財政政策に厳然たる力を持つ財務官僚のレクチャーをそのまま受け入れているからだと思われます。これは政治家も同様です。自民党税制調査会の主要メンバーは元大蔵官僚出身者だったり、財務官僚の意見に説得され、アベノミクスに対する批判論者もいるのです。
なお、民主党は、経済政策に通じる人は皆無に等しいので、民主党政権下で鳩山氏、菅氏、野田氏らが行った経済政策、円高誘導、消費税増税などは、財務官僚の主張を丸呑みしていただけなのです。
「国債を大量発行して財政出動すると、日本は借金が膨らんで財政破綻をする」という話を聞くことがよくあると思います。税収を上げて国債の償還を果たしたい財務省が情報の発信源です。これを真に受けたマスコミや政治家が騒ぎ立てるのです。
これに対して、経済評論家の渡邉哲也氏は「日本のような自国通貨建ての国債がデフォルトになることはありえない、なぜなら国には通貨発行権があり、いざとなればお金を刷ることで国債を償還できる」と述べておられます。これが、正しい経済の考え方だと思います。いたずらに税収と国債の償還ばかり気にしていては、かえって景気を悪化させ、そのために税収がますます下がるという悪循環は避けねばなりません。どうも、マスコミも政治家も経済の本質をあまり理解していないようです。
元来、経済とは「経世済民」の略で、「国を治め民を救済する」との意味です。国の経済問題については、政治家も財務官僚も原点に立ち返り、「国や国民を真に豊かにする」と言う観点で考えていただきたいものです。
つづく
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