Ⅰ. 赤峰和の時事解説 第112回
ノーベル平和賞と「中国版」ノーベル平和賞

ノーベル平和賞に「憲法9条」が選ばれるだろうと思い込んでいたひとびとには「意外な」結末になったのかもしれません。こんな報道があります。
「総理に授賞式出席していただけず、残念」社民・又市氏 朝日新聞 2014年10月10日20時16分
又市征治・社民党幹事長 ノーベル平和賞にノミネートされ、最有力候補とされていた「憲法9条を保持する日本国民」が惜しくも受賞を逃す結果となった。戦争放棄の「憲法9条を保持する日本国民」の代表として安倍総理に授賞式に出席していただけず、残念である。平和憲法、とりわけ憲法9条によって、日本が戦後70年間、戦争をせず、一人も殺さず、一人も戦死しなかったことは事実であり、貴重なことである。戦後平和憲法下の日本の歩みが、世界から称賛され、尊敬や信頼を得ていることは誇るべきである。【中略】
歴代内閣が積み上げてきた憲法解釈を変更して集団的自衛権行使を容認する閣議決定を行うなど、平和憲法を破壊する「壊憲」の暴走を進めている安倍政権によって、平和憲法が国民の手から奪われようとしている。社民党は、来年の受賞を期待するとともに、戦争のない未来をめざして、【以下略】
憲法9条:ノーベル平和賞「今後に期待」 野党幹部ら 毎日新聞 2014年10月10日
一部で有力視する予想があった憲法9条のノーベル平和賞受賞がかなわなかったことを受け、10日、野党幹部らから落胆や今後の受賞に期待する声が相次いだ。憲法改正を党是とする自民党内からは「受賞すれば改憲の障害になりかねなかった」(党関係者)との本音も漏れた。
民主党の辻元清美前幹事長代理は受賞が取りざたされたことについて「9条がないがしろにされていることへの危機感だ」と指摘。共産党の小池晃副委員長は「今後受賞すれば、改憲の動きが抑えられる」と期待感を示した。社民党の福島瑞穂副党首は「受賞すれば憲法改悪への批判が高まった。非常に残念」とコメントした。【以下略】
多くの日本国民は、冷ややかに見ていた「憲法9条のノーベル平和賞騒動」ではありますが、朝日新聞は、予想外に期待感が高かったように見受けられます。(朝日新聞デジタルから見出しだけ)
東京)「九条おじさん」蓑輪さん死去 集めた署名6万筆 2014年8月14日
「憲法9条にノーベル平和賞を」 署名32万人 2014年9月9日
(ナガサキノート)平和の訴え、首相に届いたか 2014年9月24日
おたかさん悼む声「女性政治家に道」「護憲派シンボル」 2014年9月29日
ノーベル平和賞予測、「憲法9条保持する日本国民」浮上 2014年10月4日
また、署名集めの当事者のサイトを見ますと、ここは本気モードだったようです。
署名も、日本語版ネット署名、英語版ネット署名、韓国語版ネット署名 中国語版ネット署名の4ヶ国語を用意しています。
「憲法9条にノーベル平和賞を」実行委員会
【途中から】2014年ノーベル平和賞・受賞発表は10月10日午後6時(日本時間)です。
紙面署名とネット署名の集約数の2014度最終通知は、【10月9日】に予定しております。(紙面署名は、実行委員会で保管し、集約数のみをお伝えさせていただきます。 集約に数日かかりますので、ご考慮下さい。署名は年度に関係なく累積します。ノーベル平和賞を授与されるまで署名は継続いたします。【中略】
世界の平和を願い、「戦争しないでほしい、仲良くしてほしい」という素直な、素朴な平和を求める声を世界中で大きくするために、国を超えて世界中の平和を愛する人たちと手をつなぎ、それぞれの政府に戦争させないように働きかけ、置かれたところから、世界の平和を願う1人ひとりの小さな声と力を合わせて頑張っていきましょう! 引き続きどうぞよろしくお願いいたします! 心から感謝を込めて
10/10未明に署名総数 42万3,685 をノルウェー・ノーベル委員会に報告いたしました。
署名数: 合計 42万3685 (紙面:35万0440 ネット署名:7万3245 10/9現在)【以下略】
ノーベル平和賞をもらうまでは毎年続けるようです。
ところで、この署名サイト、英語版署名は理解できるとしても、日本国内の問題であり、日本国民を対象とする「憲法9条」に、なぜ、韓国語や中国語の署名が必要なのかは理解できません。そうしないと署名の数字が集まらなかったのでしょうが、逆に、署名を集めている人の意図は簡単に見破られるものになってしまいます。
中国にとって、「憲法9条」は日本侵略のための最良のツールになっているのは明らかです。
ところで、「憲法9条」でノーベル平和賞を逃した日本には、中国が特別に配慮でもしたのかという報道がなされています。下記記事をご覧下さい。
中国版“ノーベル平和賞”候補に鳩山元首相、韓国の朴大統領 zakzak 2014.10.12
【北京=矢板明夫】ノーベル平和賞の受賞者にパキスタン人のマララ・ユスフザイさんらが選ばれたが、同賞に対抗するため中国で設立された「孔子平和賞」の今年の受賞者選びも佳境に入っている。同賞実行委員会の関係者によると、今年の受賞候補は16の人物や団体に絞られ、日本の鳩山由紀夫元首相や韓国の朴(パク)槿(ク)恵(ネ)大統領、ロシアに亡命中の米中央情報局元職員のスノーデン容疑者やシリアのアサド大統領らが候補になっている。
中国の大学教授ら33人で構成する選考委員会の最終審査を経て、受賞者が決定し、ノーベル平和賞授賞式前日の12月9日、北京で授賞式を行う予定だ。先の関係者によると、鳩山氏は「日中関係やアジアの平和に対する貢献」などを理由に、国内外から多くの推薦を受けており、「有力候補の一人だ」という。【以下略】
「孔子平和賞」の歴代受賞者は、台湾の連戦元副総統や、ロシアのプーチン大統領、アナン前国連事務総長ら5人が受賞しています。しかし、授賞式にも現れない人物が多く、プーチン大統領の授賞式には、無関係の旧ソ連ベラルーシ出身の女子留学生が代理で賞品を受け取ったといわれています。
ノーベル賞という「世界や人類の発展のために寄与した人」に授けられる至宝と、覇権を達成する目的で作られたものを同列には論ぜられませんが、それでも、「賞」の中にこめられた精神性の違いには驚きを禁じえないものがあります。
最後に、識者からのお言葉を紹介いたします。
・「憲法9条にノーベル賞を」に期待していた人々の言葉を聞けば、彼らがノーベル賞を政治利用しようと考えていたことは一目瞭然です。
・ノーベル平和賞を侮辱する行為と言えます。
・ノルウェー・ノーベル委員会が、国内の政治問題をノーベル賞の対象とすることはありません。
・今回の件で「残念だった」とコメントを寄せた政党や政治家たちは、ノルウェー・ノーベル委員会の権威を利用し、自分たちの政治的な主張を正当化しようという姑息な心を反省すべきです。
・また、「憲法9条にノーベル賞を」と主張している人たちの正体を詳しく調査せず、「平和」「不戦」ということだけで決めることがあるとしたら、ノーベル賞の権威が失われることになります。
・むしろ、「力による支配を無くそう」と世界中で訴えている安倍総理が受賞するのであれば筋が通っています。
当ブログは、Ⅰ.赤峰和の時事解説、Ⅱ.時事放談(鼎談)、 Ⅲ.日本政治精神史、Ⅳ.国際政治解説、Ⅴ.提言、Ⅵ.平成ネット塾、の六つで構成されています。時宜に応じて、テーマごとに分類して解説を加えてまいります。
当方のアドレスは akaminekazu2014@gmail.com です。