Ⅰ. 赤峰和の時事解説 第120回
維新の党への意見書について

維新の党は、次世代の党との分党後、江田氏率いる結いの党との合流でその輝きを失ってしまいました。その上、民主党との連携を深めるという選択で、設立当初の理念が失われてしまったのではないでしょうか。
維新の党の前身である「日本維新の会」は、2010年4月に設立された地域政党「大阪維新の会」を母体に、自民党・民主党・みんなの党から離党した国会議員らを加えて2012年9月に設立されました。
政党の思想的骨格となる憲法観は当初、「改憲発議要件の緩和【※1】」や参議院の廃止、首相公選制などを提唱していましたが、石原慎太郎氏などの太陽の党の合流後は「自主憲法の制定」とより踏み込んでいました。ここに国民は、既存の野党にない新鮮さと期待感を抱きました。
【※1】改憲発議要件の緩和:憲法96条「各議院の総議員の三分の二以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない」の2/3から1/2へ。
現在の維新の党の憲法観は、「基本政策の第一に『憲法改正による統治機構改革』」を掲げてはいますが、合流した江田憲司氏が本音で容認しているのかは不明です。江田氏が率いてきた「結いの党」が合流しようとした時、江田氏が「自主憲法制定」を嫌がり、それが維新分党の最大の要因になっていたといわれています。
江田氏と会談した、石原慎太郎氏も「消えてなくなった社会党と同じような言い分だ」と痛烈に批判していました。維新の党における憲法観は、橋下・江田の両共同代表の同床異夢になっているのではないでしょうか。
橋下氏は、自民党でもない、民主党でもない第三極による政界再編を目指していたようです。大阪維新の会で一気に注目され、太陽の党との合流で大きく政界に新風を巻き起こしました。しかし、結いの党を加入させることで、橋下氏が本来嫌っていたはずの「野合」に向かい始めました。
かつての自民党政権も、民主党政権も野合で出来た政党です。考え方もバラバラな集団が、政権をとる目的で集まっただけの集団です。そこには、国益という考え方はなく、党利党略、私利私欲しか存在しないのです。それと同じことをなぜか、橋下氏は選択してしまいました。そしていま、悪手ともいえる民主党とも手を組もうとしているのです。
振り返ってみれば、この躓きの原因は、最初に7名の国会議員が集まったときに問題があったはずです。
2012年9月、自民党・民主党・みんなの党に所属する国会議員7名が合流を表明しました。維新の会としては政党要件を満たす政党になったのですが、ここに問題の人物がおりました。民主党出身の松野頼久氏です。維新の党の代表代行になっていますが、彼はかつて、鳩山由紀夫氏の側近でした。(彼の父親は政界の寝業師といわれた松野頼三氏です。)
つまりは、松野氏は思想的には節操のない、脚光を浴びるところにはどこにでもいく、古い時代の政治家なのです。そのような人物が、国会議員をまとめるとなると、政治は政局になって国益はおろそかになっていきます。橋下氏も、幹事長の松井一郎氏も国会議員の経験はありません。国会は、国会独自のルールがあり、国会議員でないとわからないことが多すぎますから、おそらくは松野氏のペースで物事は進んでいったと思われます。
その上、次世代の党が分党し、日本維新の会としての基本理念が希薄になったところに、親中派である江田氏の結いの党が合流してきました。これで、橋下氏の基本的精神はよけい薄まってしまったということになります。政党を大きくしようとして、逆に、政党の理念を失わせて特色や印象を薄めてしまったのです。
現在は、民主党との提携路線を選択していきましたので、このままでは政党間に埋没していくしかありません。
国政では功を焦って野合してはいけないのです。橋下氏は、理想を高々と掲げることによって、時代がそれに追いつき、人びとが結集していく姿を追い求めるべきです。
いまが、再考の最後のチャンスなのかもしれません。
では、ここで、政界のご意見番からお話をいただきます。
・国会議員には独特の保身原理があり、思想や理念よりも、立場や力関係を優先させる風潮があります。
・それを知り尽くしているのがベテラン議員と呼ばれています。
・橋下氏はもとよりそんなことに影響される人物ではなく、また、石原氏もそんな風潮を嫌っていました。
・二人を結びつけた原点はそこにあったようです。
・ところが一定の大きさの党になると、基本理念よりも数の原理を重要視し、本来の考えにそぐわない人物さえ数の中に入れようと考える者が出てきます。
・それが松野氏であったり、結いの党の江田氏であるのです。
・彼らは口には出しませんが、政権を取りたいがために、橋下氏の掲げる理念を利用しているだけです。
・橋下氏にとってはそれが一番の懸念材料となっています。
・自らが作ったはずの維新の党ですが、今では脱藩することも選択肢にあるようです。
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